HSPの特徴とは?高感受性の人が抱える5つの特徴と悩み

HSPの特徴とは?高感受性の人が抱える5つの特徴と悩み

こんにちは。
玉木です。

今日のテーマは、
近年注目されている
HSP(Highly Sensitive Person)
についてです。

「なんだか生きづらいな…」
「人より敏感すぎるのかも?」
そう感じているあなたは、
もしかしたらHSPの気質を
持っているのかもしれません。

今回は、
HSPとは一体どんな特徴を持ち、
どのような悩みを
抱えやすいのか。

そして、
その繊細さが持つ
可能性について、
私の体験も交えながら、
科学的な視点も取り入れて
じっくりと掘り下げて
いきたいと思います。

HSPは、
病気や精神疾患ではなく、
アメリカの心理学者
エレイン・アーロン博士によって
提唱された、
生まれ持った「気質」のこと。

まるで、
他の人よりもずっと高性能な
センサーやアンテナを
搭載しているようなものです📡。

そのため、
周りの人が気づかないような
些細な音や光、
匂い、
人の感情の機微などを
敏感にキャッチします。

研究によれば、
人口の約15%~20%、
つまり大体5人に1人くらいは
HSPに該当すると
言われています。
(Aron & Aron, 1997)

決して稀な存在では
ないのですね。

しかし、
その繊細さゆえに、
現代社会では
ストレスを感じやすく、
生きづらさを抱えることも
少なくありません。

アーロン博士は、
HSPの主な特徴を
4つのアルファベットで
表現しています。
それが「DOES(ダズ)」です。

  • Depth of processing
     (深く処理する)
  • Overstimulation
     (過剰に刺激を受けやすい)
  • Emotional reactivity / Empathy
     (感情反応が強く共感的)
  • Sensing the subtle
     (些細な刺激を察知する)

今日はこの「DOES」を軸に、
HSPが抱える
代表的な5つの特徴と悩みを
具体的に見ていきましょう。

1. 物事を深く処理し、
考え抜く (Depth of processing)

HSPの人は、
入ってきた情報を
表面的に捉えるのではなく、
じっくりと時間をかけて
深く処理する傾向があります。

まるで、
質の良い材料を
丁寧に下ごしらえし、
じっくり煮込むシェフのように、
情報を多角的に分析し、
本質を見抜こうとします。

例えば、
誰かとの会話の後、
相手の言葉の裏にある意図や、
表情、
声のトーンなどを
何度も思い返して分析したり、
新しい仕事を任された時には、
あらゆるリスクや可能性を
徹底的にシミュレーションしたり。

私自身、
何か新しいことを学ぶとき、
一つの情報から
関連する情報をどんどん調べ、
納得いくまで掘り下げないと
気が済まないタイプです。

大学の卒業論文では、
参考文献のそのまた参考文献まで
遡って読み込み、
気づけばテーマから少し離れた
分野の知識まで
深掘りしていました😅。

この「深く処理する」力は、
洞察力や危機管理能力、
独創的なアイデアを生み出す
源泉
となります。

しかしその一方で、
一つのことについて
考えすぎてしまい、
なかなか結論が出せなかったり、
行動に移すまでに
時間がかかったりすることも。

常に頭の中で
多くの情報を処理しているため、
脳が疲れやすく、
精神的なエネルギーを
消耗しやすい
という
悩みを抱えがちです。

情報過多でパンクしそうになる、
そんな感覚を覚えることも
少なくありません。

2. 刺激に圧倒されやすく、
疲れやすい (Overstimulation)

HSPの人は、
外部からの刺激に対して
非常に敏感です。

大きな音や眩しい光、
強い匂い、
ザラザラした服の感触といった
五感への刺激はもちろん、
人混みの喧騒や、
複数の人が同時に話す声、
緊迫した雰囲気、
他人の感情の起伏など、
目に見えない刺激にも
圧倒されやすい傾向があります。

まるで、
高性能マイクが
あらゆる音を拾ってしまうように、
HSPの人は
多くの刺激を無意識のうちに
キャッチしてしまうのです。

私の場合は、
デパートの化粧品売り場のような
強い香りと多くの人で
ごった返す場所や、
ライブ会場の大きな音と
点滅する照明などが
特に苦手です。

短時間なら楽しめても、
長時間いると
頭痛がしたり、
ぐったりと疲弊してしまいます。

また、
カフェで仕事をしようとしても、
隣の席の会話の内容や、
店員さんの足音、
窓の外を通り過ぎる車の音など、
様々な情報が
耳に入ってきてしまい、
集中するのが難しいことも
しばしばです。

このように、
刺激に圧倒されやすいため、
人よりも疲れやすく、
エネルギー切れを
起こしやすいのが
HSPの悩みの一つです。

自分にとって
心地よい刺激のレベルを
把握し、
意識的に休息を取ったり、
刺激の少ない環境に身を置いたり
することが重要になります。

科学的根拠:脳活動の違い

Jagiellowiczら (2011) が
行ったfMRI(機能的磁気共鳴画像法)
を用いた研究では、
この刺激への敏感さについて
興味深い結果が示されています。

この研究では、
HSP傾向の高い参加者10名と
低い参加者10名
(合計20名の健康な成人、
うち実験上の問題で分析対象は18名)
に、
微妙に異なる風景写真を
見せる課題を行いました。

その結果、
HSP傾向の高い人は、
風景写真の細かな違いを
識別する際に、
視覚情報を処理する
脳の領域(特に、
より高度な視覚処理に
関わる部位)が、
HSP傾向の低い人よりも
活発に活動することが
観察されました。

これは、
HSPの人が
視覚的な情報をより深く、
詳細に処理している
可能性を
示唆しています。
些細な違いにも気づきやすいのは、
こうした脳の働きが
関係しているのかもしれません。

3. 感情のアンテナが鋭く、
共感しすぎる (Emotional reactivity / Empathy)

HSPの人は、
自分自身の感情の起伏が
大きいだけでなく、
他人の感情にも
非常に敏感に反応し、
深く共感する能力に
長けています。

まるで、
相手の心と自分の心が
Wi-Fiで繋がっているかのように、
喜びや悲しみ、
怒り、
不安といった感情が
ダイレクトに伝わってくるのです。

友人が悲しんでいれば、
自分のことのように胸が痛み、
映画やドラマの登場人物に
感情移入しすぎて
号泣してしまうことも
珍しくありません。

私も、
ドキュメンタリー番組で
困難な状況にある人の姿を見ると、
数日間その人のことが
頭から離れず、
気持ちが沈んでしまうことが
よくあります。

また、
誰かがイライラしていると、
その緊張感が伝わってきて
自分まで落ち着かなくなったり、
逆に、
誰かが心から喜んでいる姿を見ると、
自分も温かい気持ちになったり。

この高い共感力は、
深い人間関係を築いたり、
思いやりのある行動に
繋がったりする
素晴らしい資質です。

しかしその反面、
他人のネガティブな感情に
影響されやすく、
感情的に疲弊してしまう

という悩みを抱えることも。

相手との境界線が
曖昧になりやすく、
知らず知らずのうちに
相手の感情の荷物まで
背負い込んでしまうのです。

科学的根拠:共感に関する脳活動

Acevedoら (2014) のfMRI研究は、
HSPの人の脳が
他者の感情、
特に親しい人の感情に対して
どのように反応するかを
明らかにしています。

この研究では、
HSP傾向の高い成人10名と
低い成人10名
(合計20名、
恋愛関係にあるパートナーを持つ)
を対象に、
自分のパートナーや見知らぬ人が
喜んでいたり、
悲しんでいたり、
ニュートラルな表情をしたり
している写真を見せ、
その際の脳活動を測定しました。

その結果、
HSP傾向の高い人は、
パートナーが幸せそうな表情を
している写真を見たとき
に、
共感や意識、
自己と他者の相互作用に
関連する脳領域
(例えば、
島皮質、
前帯状皮質、
中側頭回など)の活動が、
HSP傾向の低い人よりも
著しく高まることが
示されました。

興味深いことに、
悲しい表情や
見知らぬ人の表情に対しては、
両グループ間で
大きな差は見られませんでした。

この結果は、
HSPの人が特に
愛する人のポジティブな感情に
強く共鳴し、
それを深く処理する

神経基盤を持つことを
示唆しています。
これは、
HSPの人が
人間関係において
深い絆を育む能力に
長けていることの
裏付けとも言えるでしょう。
しかし、
それだけ感情移入が深いと、
やはり疲れやすさにも
繋がる可能性があります。

4. 些細な変化や機微を
敏感に察知する (Sensing the subtle)

HSPの人は、
周りの人が見過ごしてしまうような
些細な音、
光、
匂いの変化だけでなく、
人の表情や声のトーン、
仕草のわずかな違いや、
その場の雰囲気、
人間関係の機微などを
敏感に察知する能力があります。

まるで、
高性能な探知機のように、
微細な情報を
キャッチするのです。

例えば、
部屋の模様替えで
家具の位置が少し変わったことに
すぐに気づいたり、
友人の声のトーンが
いつもと違うことから
「何かあったのかな?」と
察したり。

私自身、
会議中に誰かの表情が
一瞬曇ったのを見逃さず、
「今の発言、
まずかったかな?」と
後で気に病んだり、
メールの返信がいつもより
そっけないだけで、
「相手を怒らせてしまったかも…」と
不安になったりすることがあります。

この「些細なことに気づく力」は、
危険を未然に察知したり、
きめ細やかな配慮ができたり、
物事の本質を
見抜いたりする上で
非常に役立ちます。

芸術的な感性や
直感力にも繋がり、
豊かな内面世界を
育むことでしょう。

しかし、
常に周囲の微細な情報に
アンテナを張っているため、
情報過多になりやすく、
気疲れしやすい
という
側面も持ち合わせています。

他の人が気にも留めないような
小さなことが気にかかり、
考え込んでしまうことで、
精神的なエネルギーを
消耗してしまうのです。

この特性は、
アーロン博士の提唱する
感覚処理感受性
(Sensory Processing Sensitivity, SPS)
の中核的な要素の一つです。

5. 内省的で自己批判的、
そして誤解されやすい

HSPの人は、
物事を深く考える内省的な
性質を持っていますが、
それが時に自分自身に対して
過度に厳しくなる
傾向に
繋がることがあります。

高い理想を持ちやすく、
完璧主義的な面があるため、
自分の言動を振り返っては
「もっとこうすればよかった」
「あの時ああ言ったのは
間違いだったかもしれない」と
反省しすぎたり、
何か問題が起こると
「自分のせいではないか」と
過剰に責任を感じてしまったり
することがあります。

この自己批判的な傾向は、
自己肯定感を
低下させる要因にもなり得ます。

また、
HSPの繊細さや慎重さ、
刺激を避けようとする行動は、
周囲の人からは
なかなか理解されにくいことも
少なくありません。

「気にしすぎだよ」
「もっと図太くならないと」
「なんでそんなに神経質なわけ?」
といった言葉を
かけられた経験のあるHSPの人は
多いのではないでしょうか。

大人数の集まりや
騒がしい場所が苦手で
早めに切り上げたり、
一人の時間を大切にしたり
する姿は、
「付き合いが悪い」
「内向的すぎる」
「何を考えているか分からない」
といった誤解を
生んでしまうこともあります。

私自身も、
若い頃は飲み会などで
周りのテンションに
ついていけず、
無理に明るく振る舞っては
後でどっと疲れる、
ということを繰り返していました。
そして、
「どうして自分は
みんなと同じように
楽しめないんだろう」と
悩んだものです😔。

HSPという概念を知るまでは、
自分はどこかおかしいのでは、
と感じていた時期もありました。

こうした周囲からの誤解や
無理解は、
HSPの人にとって
孤独感や疎外感
深める原因となり、
「自分はダメなんだ」という
否定的な自己認識を
強めてしまうこともあります。

科学的根拠:感受性と環境

Aron & Aron (1997) の
初期の研究では、
大学生を対象とした
質問紙調査
(サンプルサイズ:
研究1では330名、研究2では161名)
を通じて、
感覚処理感受性(SPS)の
尺度を開発し、
それが内向性や神経症的傾向
(ネガティブな感情を
経験しやすい傾向)と
関連があることを示しました。

ただし、
HSPが必ずしも内向的とは限らず、
約30%は外向的であるとも
言われています。
また、
感受性が高いことが
直接的に神経症的傾向を
意味するわけではなく、
むしろ環境との相互作用が
重要であると
後の研究では示されています。

例えば、
Grevenら (2019) の
レビュー論文では、
HSP(SPS)を
より広範な「環境感受性
(Environmental Sensitivity)」
の枠組みで捉えることを
提唱しています。

この考え方によれば、
感受性が高い人は、
ネガティブな環境
(例えば、
ストレスの多い家庭環境や
いじめなど)からは
より強い悪影響を
受ける
一方で、
ポジティブな環境
(例えば、
サポートのある人間関係や
豊かな学びの機会など)からは
より大きな恩恵を受ける

(これを「vantage sensitivity」
または「Differential Susceptibility」
と呼びます)
可能性が示唆されています。

つまり、
HSPの感受性は、
困難な状況では
脆弱性となりうるものの、
良い環境では
むしろ大きな強みとなり、
成長を促す力に
なるということです🌱。

HSPは「弱さ」ではなく「才能」

ここまでHSPの人が抱えやすい
悩みや困難について
詳しく見てきましたが、
HSPであることは
決してネガティブなことばかりでは
ありません。

むしろ、
その繊細さ、
共感力、
洞察力、
豊かな感受性は、
かけがえのない「才能」です✨。

  • 人の気持ちを深く理解し、
     心に寄り添うことができる
  • 細やかな気配りや配慮ができる
  • 物事の本質やパターンを
     見抜く力がある
  • 芸術や自然の美しさに
     深く感動できる
  • 危機管理能力が高く、
     慎重に行動できる
  • 良心的で誠実である
  • 豊かな想像力と
     独創的なアイデアを持つ

これらの特性は、
人間関係を豊かにし、
仕事や創造活動において
大きな強みとなります。

大切なのは、
HSPという自分の気質を
正しく理解し、
ネガティブな側面だけでなく
ポジティブな側面にも
目を向けること。

そして、
自分にとって
心地よいペースや環境を
見つけ、
刺激を上手にコントロールしながら、
その繊細さを
活かしていくことです。

まるで、
非常に感度の高い
精密機械を扱うように、
自分自身の心と体を
丁寧にメンテナンスし、
大切に扱うことが
求められます。

HSPの特性を「弱さ」ではなく
「個性」であり「才能」として
受け入れることができれば、
生きづらさは軽減され、
自分らしく輝くための道が
見えてくるはずです。

次回は、
「HSPが楽に生きるための
具体的な対処法と考え方
- セルフケアから人間関係のコツまで -」
について、
より詳しくお伝えします。

ぜひ、
お楽しみに!

参考文献

  • Aron, E. N., & Aron, A. (1997). Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality. Journal of Personality and Social Psychology, 73(2), 345–368.
  • Acevedo, B. P., Aron, E. N., Aron, A., Sangster, M. D., Collins, N., & Brown, L. L. (2014). The highly sensitive brain: an fMRI study of sensory processing sensitivity and response to others' emotions. Brain and Behavior, 4(4), 580–594.
  • Greven, C. U., Lionetti, F., Booth, C., Aron, E. N., Fox, E., Schendan, H. E., Pluess, M., Bruining, H., Acevedo, B., Bijttebier, P., & Homberg, J. (2019). Sensory Processing Sensitivity in the context of Environmental Sensitivity: A critical review and development of research agenda. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 98, 287–305.
  • Jagiellowicz, J., Xu, X., Aron, A., Aron, E., Cao, G., Feng, T., & Weng, X. (2011). The trait of sensory processing sensitivity and neural responses to changes in visual scenes. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 6(1), 38–47.

『Holistic Coaching』

【発行責任者】玉木康司

【監修】医師・管理栄養士・臨床心理士/公認心理師